法人破産の必要書類とは?

法人破産の必要書類とは?
記入書類・収集書類の一覧と準備の仕方を弁護士が解説します

 

「会社をたたむしかないのかもしれない」。

 

そう心を決めかけた次に立ちはだかるのが「手続き」という大きな壁ではないでしょうか。
裁判所、申立書、財産目録……。聞き慣れない言葉が並ぶだけで、気持ちが重く沈んでしまう方も少なくありません。

でもご安心ください。法人破産の必要書類は多岐にわたりますが、「弁護士が作成する書類」と「会社で集める書類」の2種類に整理して考えれば、やるべきことは自然と見えてきます。そして、その大部分は弁護士がお手伝いできます。
この記事では、必要書類の全体像と準備の仕方、注意すべきポイント、申立てから手続き完了までの流れを、法人破産に詳しい山口県岩国市の法律事務所の弁護士がわかりやすくご説明します。

 

1. 法人破産の必要書類は、大きく2種類に分けられます

「破産の準備」と聞くと、途方もない作業を想像されるかもしれません。ですが、必要書類は大きく分ければ2種類しかありません。
ひとつは、裁判所に提出するために新たに作成する「記入書類」。もうひとつは、会社にすでにある資料や、役所などで取得する「収集書類」です。

「記入書類」と「収集書類」の違い

記入書類とは、破産手続開始申立書や債権者一覧表のように、会社の状況を裁判所に伝えるために書き起こす書類です。法律的な知識や、裁判所ごとの書式への対応が必要になるため、主に弁護士が作成を担当します。

一方の収集書類とは、登記簿謄本や決算書、預金通帳のコピーのように、すでに存在する資料を集めるものです。こちらは、会社の中身をいちばんよくご存じの代表者の方や経理担当の方のご協力が欠かせません。

つまり、「難しい書類づくりは弁護士へ、資料集めは会社で」という役割分担が基本です。すべてを一人で抱え込む必要は、まったくありません。

書類準備に時間がかかる理由

書類の準備には、一般的に数週間から数か月ほどかかります。時間がかかる理由は3つあります。
①集める書類の数そのものが多いこと、②銀行の取引明細など、発行までに時間を要するものがあること、③集めた資料をもとに財産目録や報告書を作り込む作業に丁寧な確認が必要なことです。
資金繰りが限界を迎えてからでは、時間との勝負になってしまいます。「破産するかどうかをまだ決めきれていない」という段階でも、早めにご相談いただくことで、余裕をもって準備を進めることができます。

 

2. 法人破産で必要な「記入書類」

まず、弁護士が中心となって作成する記入書類からご説明します。代表的なものは、次のとおりです。

①破産手続開始申立書
②報告書(代表者の陳述書)・財産目録(資産目録)
③債権者一覧表・債務者一覧表
④取締役会議事録または取締役の同意書・委任状

 

①    破産手続開始申立書

法人破産の手続きを始めるために、裁判所へ提出する中心的な書類です。会社名や本店所在地といった基本情報のほか、破産申立てに至った経緯、負債の総額、債権者の数などを記載します。
「支払不能」や「債務超過」といった破産の原因を法律的に整理して記載する必要があるため、弁護士が作成するのが通常です。代表者の方には、会社の沿革や経営が苦しくなっていった経緯を、ありのままお聞かせいただければ十分です。

②    報告書(代表者の陳述書)・財産目録(資産目録)

報告書(代表者の陳述書)は、会社の設立から破産に至るまでの経緯を時系列でまとめる書類です。「主要な取引先を失った」「借入金の返済が売上の減少に追いつかなくなった」など、経営が行き詰まった事情を、裁判所と破産管財人に正しく理解してもらうためのものです。

財産目録(資産目録)は、会社の財産を一覧にした書類です。現金・預貯金・売掛金・不動産・車両・機械設備・在庫商品など、会社にあるすべての資産を評価額とともに記載します。

どちらも、代表者の方のお話と集めていただいた資料を突き合わせながら、弁護士が完成させていきます。

③    債権者一覧表・債務者一覧表

債権者一覧表は、会社が支払いをすべき相手をもれなく一覧にした書類です。借入先の金融機関だけでなく、仕入先、リース会社、事務所の貸主、税務署や市役所(税金・社会保険料)、未払給料のある従業員なども含まれます。
破産管財人が各債権者に通知を出す際の基礎となる大切な資料ですので、少額のものや、親族・役員からの借入れも含めて、すべて記載する必要があります。

債務者一覧表はその逆で、会社がお金を受け取る権利を持つ相手(売掛先など)をまとめたものです。回収できる売掛金は会社の大切な財産として、債権者への配当の原資になります。

「うっかり書き漏らした債権者がいた」ということがないよう、請求書や帳簿を確認しながら、弁護士と一緒に整理していきましょう。

④    取締役会議事録または取締役の同意書・委任状

取締役会を設置している会社では破産申立てを決議したことを示す取締役会議事録が、設置していない会社では取締役の同意書が必要になります。あわせて、弁護士が代理人として申立てを行うための委任状にも、ご署名・ご捺印をいただきます。
書式はいずれも弁護士が用意しますので、ご安心ください。ただし、連絡の取れない取締役がいる場合や、協力を得にくいご事情がある場合は、対応に時間がかかることがあります。思い当たることがあれば、早めにご相談ください。

 

3. 法人破産で必要な「収集書類」

次に、会社の側でご用意いただく収集書類です。代表的なものは次のとおりです。

①会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)・決算書・確定申告書(直近2期分)
②預金通帳の写し(過去2年分)
③不動産の登記簿謄本・賃貸借契約書などの資産関連書類
④車検証・有価証券・保険証券など、その他資産の証明書類

なお、すべての会社で全ての書類が必要になるわけではありません。何が必要かは会社の財産状況によって変わりますので、ご相談の際にリストをお渡しして、一つひとつご案内します。

①    登記簿謄本・決算書・確定申告書(直近2期分)

会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)は、法務局で取得できます。発行から3か月以内など、新しいものが求められるのが一般的です。
決算書(貸借対照表・損益計算書など)と法人税の確定申告書の控えは、直近2期分をご用意ください。裁判所が破産の原因を判断するための、最も基本的な資料です。
手元に見当たらない場合でも、顧問税理士や会計事務所が控えを保管していることがほとんどですので、まず確認してみてください。

②    預金通帳の写し(過去2年分)

会社名義のすべての口座について、おおむね過去2年分の通帳のコピーが必要です。お金の流れを確認し、会社の資産状況や、特定の債権者だけに返済していないか(偏頗弁済)を調べるための重要な資料になります。
通帳を紛失している場合や、記帳をためて「合算記帳」になってしまっている場合は、銀行に取引明細(出入金明細)を発行してもらう必要があります。銀行によっては発行までに数週間から2か月ほどかかることもあるため、これは特に早めの手配が肝心です。インターネットバンキングをお使いの場合は、Web上の取引明細を印刷していただければ足ります。

③    不動産・賃貸借契約書などの資産関連書類

会社所有の不動産があれば、不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)や固定資産評価証明書をご用意いただきます。事務所・店舗・工場が賃借物件であれば、賃貸借契約書のコピーが必要です。差し入れている敷金や保証金は、会社の財産として扱われることがあります。
また、金融機関との金銭消費貸借契約書や担保設定に関する書類、機械・車両のリース契約書なども、あわせてご準備ください。

④    車両・有価証券・保険など、その他資産の証明書類

会社名義の車があれば車検証のコピーと査定書、株式などの有価証券があればその写し、会社が契約者となっている生命保険などがあれば保険証券と解約返戻金の計算書が必要になります。そのほか、ゴルフ会員権の証書、手形・小切手、売掛金の台帳や請求書の控えなども対象です。
「こんな細かいものまで?」と思われるかもしれませんが、会社の財産を正確に裁判所へ示すことが、手続きを円滑かつ誠実に進める近道です。判断に迷う書類は、捨てずにそのままお持ちください。

 

4. 必要書類の準備で注意すべき3つのポイント

取得に時間がかかる書類は早めに準備を

銀行の取引明細(数週間〜2か月)、法務局や市役所で取得する各種証明書、税理士からの決算書の取り寄せなどは、思いのほか時間がかかります。弁護士と必要書類のリストを確認したら、時間のかかるものから先に手配していくのが鉄則です。
準備が長引くほど、その間の資金繰りや債権者対応の負担も続いてしまいます。段取りは弁護士が一緒に考えますので、まずは全体像を把握するところから始めましょう。

書類が見つからない・紛失した場合の対応

長年の経営のなかで、書類が見つからなくなってしまうことは、決して珍しいことではありません。紛失を責めることはありませんので、正直にお伝えください。
再発行できるもの、別の資料で代替できるもの、事情を説明すれば足りるもの—対応の方法は必ずあります。反対に、体裁を取り繕おうとしてあいまいな説明をしてしまうと、かえって手続きの支障になりかねません。「ない」ことも含めて、ありのままご相談ください。

資産の隠匿・過少申告は絶対にNG

財産を隠すこと、実際より少なく申告すること、破産の直前に財産をご家族や知人の名義に移すことは、絶対にしないでください。
破産管財人は、通帳や帳簿からお金の流れを丹念に調査しますので、こうした行為はほぼ確実に発覚します。発覚すれば手続きが長期化するだけでなく、代表者個人の免責(保証債務などの支払義務の免除)が認められなくなったり、最悪の場合は詐欺破産罪などの犯罪に問われたりするおそれもあります。
「これは申告すべき財産だろうか」と迷ったら、隠すのではなく、まず弁護士に相談する。それだけ守っていただければ大丈夫です。

 

5. 法人破産の申立てから手続き完了までの流れ

必要書類の準備が、手続き全体のどこに位置するのか。全体の流れをつかんでおくと、見通しが立てやすくなります。

①    弁護士への相談から書類作成・申立てまで

最初のステップは、弁護士への相談です。ご相談の際に登記簿謄本や直近の決算書をお持ちいただけると話がスムーズですが、手ぶらでも構いません。
ご依頼いただくと、弁護士が各債権者に「受任通知」を送り、以後の連絡窓口は弁護士に一本化されます。並行して、記入書類の作成と収集書類の準備を進め、書類が揃い次第、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に破産を申し立てます。
なお、申立てには裁判所に納める「予納金」(破産管財人の報酬などに充てられる費用)が必要です。金額は負債額や事案の内容によって変わりますので、弁護士費用も含めた全体像を、最初のご相談時にご説明します。

②    破産手続開始決定から破産管財人による調査

申立てを受けた裁判所が破産の原因を認めると、「破産手続開始決定」が出されます。同時に、裁判所は中立の立場の弁護士を「破産管財人」に選任し、以後、会社の財産の管理・処分は破産管財人が行います。
破産管財人は、提出された書類をもとに会社の財産や負債の状況を調査し、不動産や設備、在庫などを売却して現金化していきます。代表者の方には、破産管財人との面談や資料の提供など、調査へのご協力をお願いすることになりますが、その場には弁護士が同席します。お一人で対応していただくことはありませんので、ご安心ください。

③    債権者集会・配当・破産手続終結まで

開始決定からおおむね2〜4か月後に、裁判所で「債権者集会」が開かれます。破産管財人が財産状況や換価の進み具合を報告する場で、代表者の方も出席しますが、ここでも弁護士が同席しますので、ご安心ください。
財産の換価が終わると、法律で定められた優先順位に従って債権者への配当が行われ、裁判所の決定により破産手続は終了し、会社の法人格は消滅します。申立てから終了までの期間は事案によりますが、おおむね6か月〜1年程度が一つの目安です。
なお、代表者の方が会社の借入れを連帯保証している場合には、代表者個人の債務整理もあわせて検討する必要があります。会社と個人の手続きを同時に進めることで、費用や精神的な負担を抑えられる場合も多くあります。

 

6. 必要書類の準備や手続きを弁護士に依頼するメリット

受任通知で取り立てが止まります

弁護士にご依頼いただくと、速やかに債権者へ受任通知を発送します。以後、督促の電話や訪問への対応は弁護士に一本化され、ご自身への電話は止まります。
多くの経営者の方が「あの通知を出してもらってから、眠れるようになった」とおっしゃいます。まず代表者が心の余裕を取り戻すことが、従業員への対応やご自身の再出発など、その後の的確な判断につながります。
なお、受任通知が銀行に届くと口座が凍結されることがあるため、送付のタイミングは必要な資金の確保も踏まえて弁護士が慎重に見極めます。

専門的な記入書類の作成を任せられます

申立書や報告書などの記入書類は、裁判所の求める形式と法律的な整理が必要で、ご自身だけで作成するのは大変な作業です。不備があれば、補正のために手続きが遅れてしまうこともあります。
記入書類の作成を弁護士に任せていただければ、代表者の方は資料集めや従業員・取引先への対応、そしてご自身の再出発の準備に力を注ぐことができます。

裁判所・破産管財人・債権者とのやり取りを一任できます

申立て後も、裁判所への対応、破産管財人との面談、債権者集会への出席など、さまざまな場面が続きます。なかには、厳しい言葉を向けてくる債権者がいるかもしれません。
弁護士が窓口となり、すべての場面に同行・対応しますので、お一人で矢面に立つ必要はありません。法的に適切な対応を重ねることが、手続きを早く、穏やかに終えることにつながります。

 

7. 法人破産・会社破産でお悩みの方は杉村法律事務所へご相談ください

法人破産の必要書類は多岐にわたりますが、その一つひとつには「会社の状況を正確に伝え、手続きを公平に進める」という意味があり、弁護士と役割分担をして進めれば、決して越えられない壁ではありません。
いちばん避けていただきたいのは、書類の山を前に立ちすくんで、時間だけが過ぎてしまうことです。資金が完全に尽きる前にご相談いただければ、予納金や費用の確保も含めて、選べる選択肢は広がります。

杉村法律事務所は、山口県岩国市で、地域の経営者の方々から法人破産・会社破産のご相談をお受けしています。
「まだ破産と決めたわけではない」「何を持って行けばいいのか分からない」—その段階で構いませんし、手ぶらでのご相談でも構いません。
あなたが今日まで会社を守ってこられた道のりに敬意を払いながら、これからの道すじを一緒に考えさせていただきます。一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。